なぜ楽天はスポーツ事業に積極的に参入しているのか、背景にある戦略的理由の仮説を考えてみた。

なぜ楽天はスポーツ事業に積極的に参入しているのか、背景にある戦略的理由の仮説を考えてみた。

今回は、楽天がなぜスポーツ事業への投資や参入に積極的なのか、その背景について仮説を立てて考えていきたいと思います。

最近の動きとしては、ヨーロッパのサッカー強豪チーム、バルセロナとのパートナー契約やNBAとのパートナーシップ締結したなど、海外での動きが活発になってきています。

多額な投資をする背景にはどのような戦略があるのか、一旦、情報調査無しに仮説を検討していきます。

スポーツビジネスへの参入はオーナーシップかパートナーシップ

スポーツビジネスへの関わり方として、オーナーシップとしてチームを保有するか、スポンサーシップのような形で、パートナーシップ契約を結ぶかの2つのタイプがあります。

前者の場合は、楽天は日本においてスポーツチームのオーナーとなっています。

楽天イーグルスと神戸ヴェッセルです。

バルセロナとNBAに関しては、パートナーシップ契約です。こちらはオーナーシップと異なり、会社の広告宣伝の要素が強いでしょう。

それぞれ形態が異なるのですが、パートナーシップ契約を結んだ背景について考えていきます。

楽天の会社名の宣伝効果があるから

これは、真っ先に思いつくポイントです。

海外有名チームのユニフォームに会社名は入っていれば、観戦者の全ての人が会社名を見ることになります。

この宣伝効果はかなり大きいのでしょう。

しかし、なぜ他にも広告手法があるにも関わらず、楽天はスポーツを選んだのでしょうか。

このスポーツの広告宣伝効果は他と異なるのでしょうか。

このポイントについても検討していきます。

スポーツの広告宣伝効果は、他の宣伝に比べて心理的な効果が強くなるから

一般的な広告宣伝の代表としてCMがあります。

CMはテレビを鑑賞している合間に流れるため、視聴者のエンゲージメントは低い可能性があります。

一方で、選手についた会社名は、視聴者が熱中してみている状態で、目につきます。

もちろん、何の会社かということは良くわからないのですが、自分の大好きなチームについている会社名として無意識に、そのロゴ自体にも良い印象を持つ可能性があります。

人間記憶とは、その時の状態とリンクさせて、記憶している可能性が高く、スポーツを見ている状態というのは、興奮している、熱狂している、楽しんでいる、などのポジティブな状態です。

このような状態で、無意識に目に付く「Rakuten」の文字が記憶の中でポジティブに残るのではないでしょうか。

人は商品を選ぶときに見慣れた商品を選ぶ傾向があるから

さて、Rakutenの文字が人々の記憶の中に、良い印象として無意識のうちに覚えられたとします。

人々が実際にRakutenのサービスを選ぶタイミングで、そのような人たちは抵抗感なくサービスを利用する可能性が高くなるでしょう。

見慣れたブランドと、そうでないブランドが並んでいたとき、差がよくわからないのであれば見慣れたブランドを買いませんか?

Rakutenは長期的なブランド戦略やマーケティング戦略に基づいて、スポーツを通して楽天ブランドを確立していこうとしているのでしょう。

スポーツを活用した広告は海外市場への参入の土台としての役割があるから

これは先ほど述べたことをまとめた理由です。

Rakutenが海外市場に参入する際に課題となるのは、名もないところから人々の抵抗感をいかに無くすかという点です。

全く無名の状態からサービスを知ってもらい使ってもらうためには大きなハードルがあります。

日本と違うマーケットに参入する時の戦略として、楽天はスポーツビジネスを足がかりに参入するという成功パターンを構築しているのかもしれません。

もちろん無意識に消費者に刷り込まれるには時間がかかりますが、長期的に見るとかなりの影響が期待できます。

そして、ヨーロッパの強豪チームとNBAに共通するポイントとしては、観戦者がグローバルに散らばっているという点。

ヨーロッパのサッカーはヨーロッパ単体だけで見られているわけではないですよね。

日本、中国、アジア、アメリカと全世界で視聴されています。

つまりここへ投資することで、全世界での広告につながるという点も、楽天のグローバル戦略とマッチしているのでしょう。

そういう意味では、各国で広告代理店を活用して、広告戦略を打つよりも1つに集中して、手っ取り早く効率的に広告を打つことができる点にも魅力を感じているのでしょう。

海外スポーツビジネスそのものへの参入も検討しているから

楽天はスポーツビジネスにサッカー、野球ともに日本で参入しています。

このビジネスでの成功体験があるので、海外でのスポーツビジネスへの参入も検討している可能性があるのではないでしょうか。

スポーツビジネスのビジネス構造はどうなっているのか、まずは見ていきます。

スポーツビジネスの売上は大きく4つ

スポーツビジネスの売上には大きく3つあると考えています。

一つが試合そのものからの収益。

試合売上 = 試合数 x 観戦者数 x 1人当たり支出単価

1人当たり支出単価 = チケット代金 + 商品売上

商品売上 = グッズ系 + 飲食系

以上のように分解ができるでしょう。

次にライセンス収入もあります。

ライセンス収入とは、放映権や、その他ゲームなどでのコンテンツ利用料です。

次にスポンサーシップ売上、これはバルセロナが広告枠として楽天に販売したものと同じです。

最後は、グッズ単体の売上、これは試合以外にオンラインでの販売やスポーツショップでの売上などが該当します。

この中でも最大の売上となっているのは、スポンサーシップ売上ではないでしょうか。

試合売上は以下適当な数字をおきますが、限界があります。

例えば、1試合観戦者数が2万人とします。一人当たりの支出が4,000円とした場合1試合の売上は8,000万円。

試合数はシーズンで100試合として、80億の売上があります。

次にスポンサーシップに関しては、その視聴者数や影響力に応じて、青天井です。全世界で見られるようなスポーツチームを構築することができれば、巨額の広告料を手に入れることができます。

そういう意味ではスポーツビジネスは、テレビ業界と似たようなビジネスモデルの可能性があります。

いかに魅力的なチームを作り、ファンを作り、そこに集まって視聴しているファンに対して広告を打つことで利益を上げることができるといった感じです。

スポーツビジネスには本業へのシナジー効果が高い

スポーツビジネスそのものでも売上が上がり、さらにシナジー効果として、自社サービスの宣伝にもつながります。

売上も上がり、広告代理店にお金を払うことなく自社で宣伝もできる。

これほど効率的な方法はないでしょう。

そして、スポーツのファンの熱量は冒頭に記載した通り、エンゲージメントが非常に高い。

チームを応援する気持ちで自社のサービスを利用してくれる可能性も高いでしょう。

そのような背景から海外でもスポーツビジネスそのものへの参入も検討しているのではないでしょうか。

ただ、いきなり参入することは難しいので、一旦はパートナーシップという形でネットワーク構築と情報収集をしている段階かもしれません。

スポーツビジネスそのものが成長産業だと見込んでいるから

最後は、スポーツビジネスそのものの将来性について考えていきたいと思います。

個人的には、スポーツビジネスはとても伸びる産業だと考えています。

理由としては、人々の余暇の時間が増える傾向にあるから。

なぜ増えるかというと、技術進歩(AIRPAAaaS、機械化、自動化)によって人々の生産性が上がるからです。

この流れは変えることはできないトレンドでしょう。

すると余った時間どう過ごすかがより重要になり、そこでスポーツは格好の対象となります。

スポーツの良い点は、観戦だけではなく、コミニティの要素が強いという点です。

人は、どんなステージになってもコミニティに属したいという欲求があります。

同じスポーツチームを応援するというだけで、強固なコミニティの仲間に入ることができます。

これは、人間の欲求を満たす重要な要素。

このように人間そのものの欲求や時代のトレンドを理解すると、スポーツビジネスそのものの将来性を感じることができます。

楽天は長期的にそのような将来像を描いているので、スポーツビジネスに積極的に絡んでいるのではないでしょうか。